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東北高校王者、全国上位常連校の鶴岡
東高・杉野森大輔監督の「用具考」
「選手の成長とともに用具を変える」

東北高校王者、全国上位常連校の鶴岡東高・杉野森大輔監督の「用具考」「選手の成長とともに用具を変える」

自分のスイングに合ったラケット、ラバーがある。
自分たちの特徴に合った用具を選ばないと伸びる部分も伸ばしきれない

山形県鶴岡東高/2023年インターハイベスト8・東北高校チャンピオンチーム

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インターハイの上位の常連校であり、東北の高校王座に君臨する鶴岡東高(山形)。17年連続インターハイに連続出場。準優勝を含む入賞が4回、ベスト8が5回という高校卓球界の名門チームに育てた杉野森大輔監督は自らも試打をするなど用具にこだわる指導者のひとりだ。
名門校では中学から教えるのが主流になっているが、山形県の鶴岡東高校は中学から教えるでもなく、中学のトップ級が集まるわけでもない。練習内容だけでなく、選手の成長を助け、補完するのが用具選びだと杉野森大輔監督は語った。
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●ー高校生の男子と女子では用具選びも違うのでしょうか?

杉野森 正智深谷高の平亮太監督とは連絡を取り合っていますが、男子のほうが自分で用具を選ぶ傾向はあると思います。とは言え、最近の高校生は意外と用具のことを知らないですね。聞けば、自分が選ぶのではなく周りの人がラケット、ラバーを選んでいたとか、強い選手が使っているから選んでいるという子どもたちが多いように私は感じます。
「このラケットはどういう特徴があって、自分のプレースタイルはこういう感じだよね」という話し合いを入学前にやっています。その時に、トップ選手が使っているから使っているとか、中学に入ってからずっと同じものを使っているからとか、勧めたれたものをそのまま使っています、と言ってきます。自分の卓球がこういうスタイルで、自分はこういうボールを打ちたいからこのラバーを使います、という考えはあまり持っていませんね。
用具が合っていればいいけれども、自分の考えを持っていない子には、「こういうプレーならこういう用具がいいんじゃないか」「今はこういう用具を使って、将来的にはこういう用具が使えるようになったらいいと思う」と話をしていきます。
卓球を始めた子どもがいきなり、コントロールの難しい「特厚」のラバーを使うとか、トップ選手が使っているラバーを使うのは間違いだと思うけれども、自分のスイングに合ったラケット、ラバーというものがあると思います。自分たちの特徴に合った用具を選ばないと伸びる部分も伸ばしきれない。
また入学する前に親御さんと本人とも話をして、「用具は自由だけれども、段階を踏まえて用具は変えるものだし、サポートできる部分もあります」と説明します。
選手が明確に「これを使いたい」という時には使わせるし、こちらで一方的に変えることはしない。用具は本人が納得しないとだめだから、話し合いますし、選手が調子が良い時でもさらに強さをバージョンアップさせるために変えることもあります。逆に、勝てない時に気分転換を含めて変えることもします。

●ー高校生だと夏のインターハイ、冬の全日本選手権が大きな大会になりますが、やはりそういうビッグゲームのあとに変えるんですか?

杉野森 メーカーが新しいラバーを出すタイミングで、そのラバーを試すことはします。変えるタイミングはまちまちです。ただ、練習で良いと思っても、実際の試合のプレッシャーのかかる中で試さないとラバーの本質はわからないと思います。
高校選抜でベスト8に入った時には、準々決勝の出雲北陵戦でうちの梅木が相手エースの小野選手に2-0でリードしていたのに、最後はまくられて負けました。団体戦で安定しなきゃいけないからといって、インナーラケットを使っていたけど最後は勝ちきれなかったけど、最後まで威力を落とさないようにアウターラケットに変えたり、ラバーも変える。結構、その時の調子やプレーによって、またボールの飛び出しの方向とスイング方向を見ながらかなり変えますね。
用具に関しては国際卓球の神健介さんのアドバイスをもらうし、彼がは鶴岡まで来てくれるので、その時に選手と一緒に話をしたりして、用具が合っているかどうかも確認します。
高校に入ってくる時にはビギナー用の用具を使っている選手もいたりするので、いきなりトップ仕様のラバーにするのではなく、少しずつ段階を踏まえて変えていくようにします。もちろん筋力もついてきたら、ラバーもそれに合わせて変えるようにします。

インターハイでの鶴岡東高の杉野森監督
体が変わって、スイングスピードが変わるのだからラバー、
ラケットも変える必要があります

●ー鶴岡東高の選手の用具リストを見ると、一人ひとりの用具が微妙に違いますね。これは監督は全部把握しているんですか?

杉野森 もちろん選手全員の用具はすべて頭に入っています。用具を変える時には必ず話し合いをするし、自分で必ず試打をしています。 

●ーフォアがバタフライで、バックはXIOMという組み合せの選手もいます。

杉野森 日本のラバーが飛びすぎて使えないという選手は昔からいます。中学生の時からXIOMを使っている選手に、バタフライのラバーを使わせようとするんだけど、どうしても使えないという選手もいます。もちろん、その逆もいますが、無理やり使わすことはしない。だから選手一人ひとりのラバーが結構違うのでしょうね。

●ー高校1年と3年では体の強さ全く違いますね。その段階で、用具を変える必要があるということですね。

杉野森 高校1年生と3年生では体は全く別物ですね。フィジカルコーチについているので体が変わっていき、スイングスピードが変わるのだからラバー、ラケットも変える必要があります。つまり選手の成長とともに用具は変えるべきなのです。

●ー鶴岡東高はXIOMラバーの比率が相当に高いです。

杉野森 XIOMさんには私が鶴岡に来てから18年来、選手の用具面ではサポートを受けています。新しく出るラバーは必ず試すようにしています。試合で勝ちたいわけだから、悪いと思ったら使いません。選手に合うものがあれば使わせます。このスタンスは変えません。
お金を出して用具を買うこともあるので、親御さん、本人としっかり話し合います。
ぼくらが選手の頃って、用具へのこだわりが強くあったけれども、今の子は意外とないんですね。「高校に入ったら自分で選んで自分で決めてもいいんじゃないか」と言います。

●ー普通、男の子はそういう用具に関心が向くものではないですか?

杉野森 いや~、ぼくなんかそういう用具選びとか大好きだったんだけど、今の子は違うんですね。昔はハサミに使い方とか、貼り方までもいろいろ試したもんですけど。
それに、ラケットの重さも気にします。いつも測らせて、重いラケットだとボールが飛ぶぞ、軽めだとコントロールはやりやすいぞと説明したりしますけど、ラケット重量は185gをベースにして190g前半で抑えるようにしています。3年生くらいになる頃には自分たちで決められるようになってきます。
2014年にボールがセルロイドからプラスチックに変わった時点で用具も変わりましたね。回転量も減ったので用具も見直すべきですね。そういう中で「ジキル&ハイドZ52.5」は本当に良いラバーですね。あれは使えるラバーです。

<鶴岡東高選手の使用ラバー>

F= フォア面 B= バック面

多田啓佑(3年)Fテナジー05/Bオメガファイブツアー
橘友駿(3年)Fディグニクス05/Bテナジー05
梅木大智(2年)Fディグニクス09C/Bジキル&ハイドX50.0
高山卓彦(2年)Fキョウヒョウ/Bテナジー05
志賀亘佑(2年)Fジキル&ハイドZ52.5/ Bジキル&ハイドZ52.5
野中琉雅(2年)Fディグニクス05 /Bオメガファイブヨーロッパ
阿部鴻憲(1年)Fディグニクス05/BFディグニクス09C
水野登偉(1年)Fジキル&ハイドZ52.5/ Bジキル&ハイドZ52.5
石塚雄人(1年)Fディグニクスグ05 /Bディグニクス09C
太田大夢(1年)Fテナジー05/Bテナジー05
佐藤瑠生斗(1年)Fテナジー05/Bテナジー05

<取材=卓球王国>