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全国上位高の正智深谷・平亮太監督が用具を語る。
「用具にこだわる選手は強くなる」その1

全国上位高の正智深谷・平亮太監督が用具を語る。「用具にこだわる選手は強くなる」その1

総じて女子は男子よりもこだわりはないけど、
田口(インターハイチャンピオン)のこだわりはすごかった。
卓球を深く考えていた

たいら・りょうた 正智深谷高校卓球部監督
1971年9月7日生まれ、鹿児島県出身。熊谷商高、埼工大深谷高時代に1987~1989年のインターハイ団体3連勝、1988年シングルス優勝、全日本ジュニア優勝。1989年世界選手権日本代表。早稲田大からびわこ銀行を経て、プロ選手(健勝苑)に転向後、2004年に正智深谷高の教員として現在に至る。妻は世界代表の樋浦令子、長女は全日本バンビ優勝の鈴莉空(りりあ)

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かつてインターハイを制し、世界代表として日の丸をつけてプレーした平亮太。
2004年からは正智深谷高校(埼玉)で教員、指導者として活躍。高校からの指導でインターハイの3位入賞5回、ベスト8に3回という成績を残している。
一方、新しいラバーは自ら試打をしながら、選手との適性を考える「用具にこだわる指導者」としても有名だ。
今回は、用具に関する考え方を聞いてみた。
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●ー平さんのところはXIOMの用具を使う選手が多いですね。

 XIOMのサポートを受けてもう14年ほどですね。
それまでは入ってきた時の用具をそのまま使ったり、私が現役時代、バタフライを使っていたので、バタフライやミズノとか、いろんなメーカーの用具を使っていました。

●ー平さん自身は選手時代、用具にこだわっていたんですか?

 ラケットやラバーの硬度とかめちゃくちゃこだわっていましたね。インターハイで優勝した頃もそうです。人よりも自分に合った良いものを選びたいという気持ちが強かった。ラケットもグリップの大きさ、厚さ、大きさも自分の希望で特注を作ってもらいました。

●ー早稲田からびわこ銀行に入って、その後、プロ選手として健勝苑に入っていますね。指導者の道を進んだのは?

 健勝苑を辞める1年前から教員を考えていて、教員になる2年前からミキハウスでコーチをしていました。2004年に教員として学校(正智深谷高)に入り、翌年から卓球部が強化クラブになっているので、卓球部監督は18年目ですね。

●ー現役時代は用具に相当にこだわっていた。そして女子高校生を教える立場になった。女子選手は総じてあまり用具にこだわらない傾向がありますね?

 女子は男子と比べればこだわりはないですね。極端な言い方をすれば、指導者が「これを使いなさい」と言うと、それを信じて使いますし、細かいこだわりはない。ただし、うちの卒業生でも田口(瑛美子/2015年インターハイ優勝)のこだわりはすごかった。
女子でもそういうこだわりのある選手は卓球を深く考えるので、強くなります。他にはカットの牛嶋(星羅/インターハイ3位)、平侑里香、平真由香もそうでした。用具にも繊細でした。もっと良いものを使いたい、自分に合うものを探したいという気持ちがあって、それが卓球に活かされますね。そういう選手はやはり強くなっていきます。

●ー女子選手の好みの傾向はありますか? 男女の違いはありますか?

 レベルにもよりますが、男子はボールの威力がないとなかなか得点できないという傾向があると思いますが、女子はボールの威力だけでなく、安定性という部分が重要になってきます。使わせる用具も回転のかけやすく、まずコントロールを重視して、そこからパワーを求めていく感じですね。最初から飛びや弾みを求めるのではなく、まずは回転のかけやすい用具を選んで、そこから威力を徐々に出していく選び方をします。

2023年全日本バンビの部で優勝した平鈴莉空(りりあ)
平亮太監督の奥さんは元世界代表の樋浦令子さん(愛娘と)
最終形の用具を初期設定でも使わせて慣れさせるやり方。
硬度と厚さでコントロールを調整する

●ー中学校から練習に来る子もいると思いますが、女子の選手に最初から将来を見据えて良い用具、ある程度威力の出る用具を使わせるやり方と、最初は飛ばなくても、体の成長とともに少しずつ弾む用具に変えていくやり方があると思います。

 ぼくは杉野森さんの考え方(体の成長、筋力に合わせてラバーを変えていく)と少し違いますね。最終的に大人になるにつれて用具を変えても、最終的には最上級の用具を使うと思う。それならぼくは初期設定の時からそれに近いものを使わせたい。だから娘の鈴莉空がバンビで優勝した時の用具はXIOMのJ&H(ジキル&ハイド)のZ52.5です。
でもうちの学校に入ってくる子は初期設定がわからないし、どういう理由でその用具を使っているのかもわからないので、まず使っているラケット、ラバーを見ます。厚さで言えば、「アツ」のラバーを使っている子が多くて、それならばそれを基準にして、もう少し回転のかかるもの、弾みの良いものを使わせ、そこから最終形にもっていくようになるので、ぼくは弾まないものから弾むものという変え方よりは、最初から最終形と同じようなラバーとラケットを使わせ、それに慣れさせるという考え方ですね。

●ーその考え方で言うと、バタフライでは「ディグニクス」であったり、XIOMで言えば、「J&HZ52.5」だと思いますが、高校に入ってきたあたりでそういう最上位機種と言われるラバーを使わせ、「Z52.5」はMAXだけなので、コントロールのために同じような種類で厚さで調整するため、2.1mmの厚さにするとか、スポンジ硬度の軟らかいものを使わせたりするのですか?

 中高校生になるとある程度筋力もついてきているので、アツとかMAXくらいのラバーでも使えるので、そこでコントロールを求める時にはより回転のかけやすいラバーを使わせます。

●ー同じ種類のラバーでもトップシートは同じだけど、スポンジ硬度が違うラバーもあります。最終的には52.5度を使わせたいけど、今はコントロールを上げたいから、同じタイプの47.5度のラバーにすることもありますか?

 そういうこともあります。硬度の調整と、厚さの調整で(コントロールを)考えることもあります。うちの娘で言うと小学生2年生だけど「J&HZ52.5」で両面MAXでした。ラケットは「ティモボルTJ」というジュニア用のラケットで、グリップが小さく、軽量のもので、優勝した時には総重量が173gでした。
ラケットを弾むものにしてラバーは少し抑え気味にするのか、ラバーは弾むものにしてラケットのはずみを抑えてバランスをとるのかと。ラバーとラケットの組み合わせが重要です。ただ、ボールにタッチするのがラバーなので、まずラバーを優先的に選んで、それに合わせてラケットを選ぶほうかもしれませんね。

●ー高校から入学した選手でも、その前に練習に来たりする時に用具の話をしたり、変えてもらったりはしますか?

 用具の話はするんですけど、入学前に強制的に変えることはしません。それまでの指導者もいますし、お付き合いのある卓球ショップさんとの関係性もあるので、いじらないようにしています。実際には「その用具合ってないよ」と言いたくなる時はあるんですが、そのクラブを指導している方が卓球ショップの方だったり、その方の推しの用具もあるのでしょうから、口を出さないようにしています。入学前に練習に来て、そこでいきなり用具を変えられたら気分は悪いと思います。ただある程度、指導者同士で話し合える関係性であれば、相手と相談します。

●ー入学前の選手と用具が合ってないケースとはどういうものでしょうか? 例をあげてください。

 総重量が重すぎて、「これは振り切れないだろう」ということがありますね。また、女子の場合は、表ソフトなどの異質ラバー(両面で声質の違うラバー)を使っている選手の割合が半分とか、3分の1くらいを占めます。この選手ならもっとナックルの出しやすいラバーが良いなとか、粒高で変化を求めているのに、スポンジが厚いものを使っているので、もっとスポンジの薄いものを使ったほうが良いということがあります。
一番は総重量問題ですかね。「こんなに重いラケットだと、うちの練習で一日もたないよ」という選手もいます(笑)。重さを気にせずにブランドで選手か指導者が選んでいるのかもしれません。
最近は、入学している子は良い用具を使っているんですけど、もっとコントロールを求めたほうが試合で勝てるよ、という選手はいます。
ただ、最近、どのメーカーもラケットとラバーの性能は上がっています。それを感じます。どのメーカーもレベルが高くなっていると思います。

<取材=卓球王国>

2023年インターハイでベンチコーチする平監督