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正智深谷高・平亮太監督
「用具を気にする女子選手こそ勝てる選手」

2023年12月14日

正智深谷高・平亮太監督「用具を気にする女子選手こそ勝てる選手」

「ジキル&ハイド」は全部試打。
最終サンプルと同じものが商品になり、
特にジキル&ハイドZ52.5は
自分が現役だったら使っているだろう

たいら・りょうた 正智深谷高校卓球部監督
1971年9月7日生まれ、鹿児島県出身。熊谷商高、埼工大深谷高時代に1987~1989年のインターハイ団体3連勝、1988年シングルス優勝、全日本ジュニア優勝。1989年世界選手権日本代表。早稲田大からびわこ銀行を経て、プロ選手(健勝苑)に転向後、2004年に正智深谷高の教員として現在に至る。妻は世界代表の樋浦令子、長女は全日本バンビ優勝の鈴莉空(りりあ)

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かつてインターハイを制し、世界代表として日の丸をつけてプレーした平亮太。
2004年からは正智深谷高校(埼玉)で教員、指導者として活躍。高校からの指導でインターハイの3位入賞5回、ベスト8に3回という成績を残している。
元日本代表選手としての打球感覚は、試打する時に活きる。XIOMの最終サンプルは今まですべて試打してきた。
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●ー2013年頃から正智深谷はXIOMが用具面でサポートをしていて、用具にこだわる平監督は実際にラバーのサンプルを自ら試打をしていると聞いています。

 実は今までも最終サンプルの段階でほとんどのXIOMのラバーは打っているのですが、最終サンプルで良いと思っても、大量生産で商品として出来上がったものが違うことも過去にはありました。
「ジキル&ハイド」シリーズのものも全部試打しました。「ジキル&ハイドX」「ジキル&ハイドV」「ジキル&ハイドH」そして、「ジキル&ハイドZ52.5」に関しては最終サンプルと同じものが商品であがってきました。
特に「ジキル&ハイドZ52.5」サンプルを試打した時に、「今自分が現役だったら絶対にこれを使う」というレベルでした。「ジキル&ハイド」シリーズは今までの「オメガ」シリーズとは全く別の特徴を持っているラバーだと思いますね。今までの「オメガ」でもトップシートは相当に良質で、回転はかけやすいラバーでした。
私がラバーをチェック・試打する時にひとつの基準があります。それはツッツキのボールをドライブした時にボールがどのように飛んでいき、どのような感触が残るかという点です。

今回の「ジキル&ハイド」はツッツキのボールをドライブしてもボールの上がり方も全然違いますね。ツッツキを打った時にしっかりボールが食い込んで、ボールの引っかかりがすごく良くなっている。それは他のメーカーのラバーにも言えることですが、今までは単に弧線を求められていたのに、対ツッツキのドライブを試すと、今回の「ジキル&ハイド」でも相当にレベルが高い。
特に「ジキル&ハイドZ52.5」はトップシートの性能そのものが高くなっている気がします。スポンジも以前のラバーよりも弾みが増している。でもスポンジの部分よりもトップシートの性能の高さのほうを感じますね。

●ー以前だとスポンジ硬度も47.5度が主流で、50度だと「少し硬いね」と言われていたのが、今は52.5度を選ぶ人が多くなり、トップ選手になるとさらに硬度を上げていく傾向があります。女子選手はどうなっていますか?

 うちの選手は力のない選手だと47.5~48度くらいで、ある程度力のある選手だと52.5度の「ジキル&ハイドZ52.5」でも十分使えます。52.5度だと硬く感じますが、トップシートが相当にレベルアップしているから、その硬度でも使えるのだと思います。それだけ硬いラバーでも弧を描いてくれます。以前ならこの筋力で52度のスポンジ硬度は使えないと思っていたのが、トップシートの進化で使えるようになっているんですね。今までは「オメガⅦツアーi48」(XIOM)を使っていた選手が「ジキル&ハイドZ52.5」に切り替わっています。

インターハイベスト8坂﨑愛華<3年> 
36.5ALXi(XIOM) / F オメガⅦ ツアーi48(XIOM)/ B オメガⅦツアーi48(XIOM)

●ーラバーが進化しているということですが、ラケットとの組わせはどうですか?

 前は「フィール」(XIOM)や「アイスクリーム」(XIOM)などを選手は使っていましたが、今は「36.5ALXi」(XIOM)が多いですね。

●ー女子ではインナーとアウター、木材と、なにか傾向がありますか?

 やっぱり女子は男子よりもコントロールを気にするので、インナーのほうが多いですね。ところが、「フィールZXⅡ」がインナーで、「フィールZXⅢ」がアウターなのですが、打ち比べるとアウターのほうがインナーのような打球感を持っていたので、選手はアウターの「フィールZXⅢ」を使っていました。

●ー平監督が考える用具の重要性とは何でしょうか? 

 男子と女子の違いはあると思いますが、最終的には女子も男子のような用具を使えないといけないと思います。「女子だから、この用具でいいかな」ではなく、目指すべきところは同じなら最終的には日本のトップが使っているような用具を使ってほしいと思います。

高校時代というのは、選手としては強くなっていく過程で、これから大学や実業団に進んだりすると思います。うちの高校ではコントール性能を求めていますが、そこから大学や実業団に進んでいく時には男子の用具と同じものを使えるようになるのが理想です。
ということは、中学時代、高校時代、大学時代、もしくは実業団時代と、筋力やプレーが変わるので、用具をそれらに応じて変えていくことが大切です。 

●ー卓球ショップの人に聞くと女子の選手は同じ用具をずっと使い続けるために、ラバーを替える時にも「前と同じもの」と言ってくるようですね。

 そういう傾向はあります。変えるタイミングさえもわからない、変えることを気にしない選手もいます。ラバーの劣化状態を私は気にしてますが、選手によっては自分の用具の劣化も気にしない子もいるので、そうすると性能が落ちた状態で同じ用具を使い続けることになります。そこは男子と女子では違います。でも強くなるためにはそういう用具に関すことにも関心を持たなければいけません。

2015年インターハイ優勝 田口瑛美子 
当時「オメガ5ツアー」(XIOM)を使っていた

●ー用具を変える時というのは選手には説明をしていくのですか?

 このラバーはこういうものだから、と説明しながら試させていきます。私もこの選手にはこのラバーがいいなと思っているので、大体8割くらいは決まってしまいますが、中には、「これではダメです、このラバーだとこの技術がうまく行かない、フォアのラバーを替えるとバックの感覚も変わるから嫌です」とこだわった選手がいます。
それはインターハイチャンピオンになった田口瑛美子(2015年高校チャンピオン)です。でも、実際には彼女が言っていることは正しかったし、そのくらい用具に繊細な選手は強くなります。女子選手でも、日本のトップ選手は用具に対する意識も高い人たちばかりです。
正智深谷でも用具も気にしながら練習に励んでいきたいと思います。

●ー今回貴重なお話ありがとうございました。
<取材=卓球王国>

優勝を決めた直後の田口を迎えるベンチの平監督
日々練習に励む正智深谷ガールズ