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アイスクリーム……だと!?
ユーザーの度肝を抜いた超個性派ラケット

アイスクリーム……だと!?ユーザーの度肝を抜いた超個性派ラケット

両面差ブレード誕生の理由と、
鄭栄植(ジョン・ヨンシク)の悩み

鄭栄植/ジョン・ヨンシク
1992年1月20日、韓国・議政府市生まれ。2011・2017年世界選手権男子ダブルス3位、世界ランキング最高位は7位
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そのラケットがマーケットを賑わせたのは今から4年前、2020年の初頭。『アイスクリーム』という卓球ラケットにはおよそ似つかわしくないクール&スイートなネーミングと、ブレードの両面に異なる特殊素材を配置するというエキセントリックな構造で、用具愛好家たちの注目を一身に集めた。

もともと『アイスクリーム』は、XIOM契約選手、鄭栄植(ジョン・ヨンシク)のために開発されたラケットだった。ジョン・ヨンシクは世界でも指折りのすぐれたバックハンド技術を持つ選手だったが、実はフォアハンドのショットに不安とコンプレックスを持っていた。

フォアハンドの弱点を補強しようとして反発力を高めると、得意のバックハンドに狂いが生じる。バックハンドにベストマッチなブレードを選ぶと、やはり苦手なフォアハンドの威力が出ない……彼はまるで出口のない迷路にハマってしまったようだった。

だが、そんなジョン・ヨンシクの悩みはXIOM開発陣に突拍子もないアイデアをひねり出させた。すなわち「ブレード両面の反発力や打球感を、わざとアンバランスにすればいいのではないか」と。

製造過程のトラブルを克服
世界初の両面異素材ギア

ところが、言うは易く行うは難し。ブレードの両面に異なる特殊素材を組み込むと、どうプレスしても板に反りが生じてしまうという難問が発生した。それでもXIOM開発陣はあきらめなかった。使用する木材や特殊素材、板同士をジョイントする接着剤、乾燥時間や乾燥手法などを幾度となく試行錯誤し、ついにそれを完成させたのだ。

起用した特殊素材はアクシリウムカーボンとゼフィリウムカーボン。アクシリウムカーボンを組み込んだA面で打てば、柔らかな打球感ながら強烈な反発力と伸びを兼ね備えたドライブショットが発射される。ゼフィリウムカーボンを組み込んだZ面で打てば、しっかりした打球感でボールをつかみ、正確にコントロールすることができる。

ジョン・ヨンシクはフォアハンドにA面、バックハンドにZ面を使い、自らのプレーバランスの補正に成功。バックハンドのフィーリングを損なわずにフォアハンドの威力を強化するという長年の課題をついにクリアしたのだ。

ジョン・ヨンシクの悩みに端を発したラケット開発、ブレード両面に異なる素材を配置するというアイデアの降臨、板の反りというトラブルを克服した末の製品完成、名づけられしは『アイスクリーム』――かくして、世界初の両面異素材ブレードが世に出ることになった。

韓国の鄭栄植。世界選手権メダリスト

実力と可能性を備えた本格派
プレーする喜びを無限に増進

ファンキーな商品名と世界初の両面異素材ブレードというユニークさが受け、『アイスクリーム』は出足から好調なセールスを記録した。そして、実際に使用したユーザーからは多様なインプレッションが聞かれ、このラケットが単なる色物ではなく、確かな実力と無限の可能性を備えていることが見えてきた。

例えば、フォアハンドが得意でバックハンドが苦手という選手の場合、コントロール重視のZ面をフォアに使用し、威力重視のA面をバックに使用すれば、プレー全体のバランスがとれる。ふつうはそのパターンが多いだろうが、あえてそれを逆にすることでプレースタイルに極端な特徴を持たせることも可能だ。

すなわち得意のフォアにA面を使用して最大限の威力を追求しながら、苦手なバックにZ面を使用してブロックやツッツキなどの守備的プレーに徹するというやり方だ。特にZ面は粒高ラバーや表ソフトラバーなどとの相性も良いから、異質攻守型のバックにとてもマッチする。

両面に全く同じラバーを貼っても異なる球質や威力のボールがナチュラルに出るところも面白い。その日の調子や試合の局面に合わせてA面とZ面を反転させながらプレーする、なんていう工夫もできて楽しい。使う人のひらめきや感性次第で、プレーする喜びが無限に広がっていくラケットだと言えるだろう。

「アイスクリームAZX」はアウター。アクシリウムカーボン側がA面
「アイスクリームAZX」のZ面。
ゼフィリウムカーボンがZ面
アイスクリーム AZX

攻撃用アウターラケット
木材5枚+ゼフィリウムカーボン1枚+アクシリウムカーボン1枚
ブレード厚 5.7mm
重量 85g±
グリップ FL、ST
¥24,200(税込)

 

アウターもインナーも秀逸
迷い悩む楽しみが醍醐味

『アイスクリーム』は発売当初からアウタータイプのAZX、インナータイプのAZXiの2種がラインナップされているが、これは単に素材が配置されているポジションが異なるだけでない。表面木材の種類も変えてあり、その効果で、それぞれのブレードに宿された個性が際立っているのだ。

アウタータイプのAZXでは、歯切れの良い打球感と瞬発力を創出するコトを表面材に起用。台上プレーで先手を取って速攻を仕掛け、前陣でのハイピッチ連打で相手を圧倒していくようなプレーに向いている。

インナータイプのAZXiでは、しっかりした打球感と粘り強いスピンを生むリンバを表面材に起用。先手後手にかかわらずラリー戦で本領を発揮し、中後陣からでもズドンと重い一発強打を放てるのが魅力だ。

ちなみにこの『アイスクリーム』シリーズのアイコンであるジョン・ヨンシクは、アウターのAZXとインナーのAZXiの双方を自らの調子やフィーリングによって使い分けていたという。それほどまでに両アイテムとも甲乙つけがたい名品、と言うことができるだろう。

アウターを買うかインナーを買うか、A面をフォアにするかZ面をフォアにするか、何のラバーを合わせるか……いろいろ悩ましいラケットだが、それが楽しい。まるでアイスクリームショップでカップにするかコーンにするか、何のフレーバーにするかを迷ってしまう時のようなウキウキがそこにはある。

自らの卓球にマンネリや限界を感じているプレーヤーは、この『アイスクリーム』を手に取ると新しい世界が拓けるかもしれない。発売から4年を迎えるラケットだが、まだまだそのフレッシュさは万人を虜(とりこ)にする魅力を放ち続けている。

「アイスクリームAZXi」はインナー。アクシリウムカーボン側がA面
「アイスクリームAZXi」のZ面。
ゼフィリウムカーボンがZ面
アイスクリーム AZXi

攻撃用インナーラケット
合板構成
木材5枚+ゼフィリウムカーボン1枚+アクシリウムカーボン1枚
ブレード厚 5.7mm
重量 85g±
グリップ FL、ST
¥24,200(税込)