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中国と欧州の混合型!
ハイブリッドタイプの
「ニュー・ヴェガ」に期待大

2024年03月15日

中国と欧州の混合型!ハイブリッドタイプの「ニュー・ヴェガ」に期待大

ヴェガシリーズの新作
5年の沈黙を破り登場

2009年にヴェガプロ・ヴェガアジア・ヴェガヨーロッパという高性能スピンテンションラバー3アイテムを驚きの低価格でリリースし、一躍その名を世界市場にとどろかせたXIOMのヴェガ。その後も数々の名作を世に送り出してきた同シリーズだが、2019年のヴェガXを最後に、新作の登場は途絶えた。

さすがにもう、ヴェガも打ち止めか……と思われた2023年の暮れ。卓球王国誌上に展開されたXIOMの広告ページに、見慣れないグリーンのパッケージがあった。Vのロゴと微粘着の文字。これは!と思ったファンも多いはずだ。そう、実に5年ぶりのヴェガシリーズ新作である。

注目のラインナップは以下の通り。「ヴェガプロハイブリッド」「ヴェガアジアハイブリッド」「ヴェガヨーロッパハイブリッド」の3アイテムだ。総称は「ヴェガHシリーズ」。今回は、この中でいち早くリリースされたヴェガプロハイブリッドにフォーカスした記事をお届けする(他の2種は2024年内に発売予定)。

「ハイブリッド」の名は
中国と欧州の融合を表す

本題に入る前に、基本的な前提を説明しよう。新作の名称に付随したH=ハイブリッドとはご存じの通り、異なるモノの「組み合わせ」を意味する言葉である。では、ヴェガHシリーズのハイブリッドとは何と何を組み合わせているのか。その答えはズバリ、中国テイストとヨーロッパテイストの組み合わせである。

ヨーロッパタイプのラバーがスピードやパワー、ボールの伸びをウリとしているのに対し、中国タイプのラバーはスピンや正確性、ボールの収まりをウリとする。この両者の特長を両立させたラバーをXIOMではH-TOUCHラバーと呼び、このテクノロジーはジキル+&ハイドH52.5に初搭載されている。

ジキル&ハイドシリーズは主に上級者~トップ層をターゲットにしたラバーだが、今回のヴェガHシリーズはプレーレベルを選ばない。せっかく開発したH-TOUCH=自慢のハイブリッド技術を、より多くのプレーヤーに楽しんでもらいたい――そんなXIOMの心遣いが感じられる商品展開だと言えよう。

中国式微粘着シートと
コシのあるスポンジ

それを踏まえたうえでヴェガプロハイブリッドの特徴を見ていくと、まずトップシートの構造に目が留まる。表層部が肉厚で低い粒が密集したその形状は、中国ラバーそっくりだ。シート表面に触れてみると、かすかな粘着性を感じる。ボールを上から押しつけて持ち上げると、わずかな時間くっついて浮く。いわゆる微粘着である。

ヴェガシリーズおなじみのブラックスポンジの硬度は47.5度。気泡は非常に微細になっており、肉眼でかろうじて視認できるレベルだ。ラバー全体を指でへこませると、スポンジより先にトップシートがぐにゃりと変形し、ミディアムハードなスポンジと非常に柔軟なトップシートの組み合わせだと確認できる。

実際にボールを打つと、まず基礎打ちの安定性に感動させられる。フォアハンドでもバックハンドでも、しっかりと手に伝わる心地よいフィーリングがあり、イメージ通りのボールが相手コートへ正確に吸い込まれていく。無限にラリーが続けられそうなこの感覚は「まさにヴェガ」である。

ドライブをかけてみると、これがまた安定性抜群。柔軟で微粘着を帯びたトップシートが確実にボールをつかみ、コシのあるスポンジが打球をグッと後押ししてくれる。さほど力を入れなくてもきれいな球筋のドライブが何本でも入るため、ショットの安定性に不安を抱える中級者にとっては、救世主的なラバーとなり得るだろう。

卓球王国編集部小川勇気のラケットに貼ってみた
上級者層でも十分使える
実戦的オールラウンド性

下回転系の技術も非常に安定する。ツッツキやストップは切れ味鋭く、なおかつコントロール性能が至高だ。トップシート表面で薄くとらえた時の強回転とフラット気味に当てた時のナックルとの差をつけることも容易なので、サービスも変幻自在に出せる。強打に対する抑えも利かせやすく、カットマンにもかなりおすすめだ。

さらに驚かされるのは、下回転のボールに対するドライブ性能の高さ。トップシートの柔らかさから考えると下回転打ちが難しそうに思うかもしれないが、良い意味で予想外のパフォーマンス。スピード系のパワードライブもチョリドラ系のループもバッチリ決まるし、台上のチキータもボールをとらえやすく、成功率がすこぶる高い。

そして、カウンタードライブのやりやすさが図抜けている。ボールを受けた時の感覚の良さとスピン反転性能がすばらしいため、相手が自信満々で打ってきたエースボールをあざ笑うかのようなカウンターショットが面白いように決まるのだ。ブチ切りツッツキからのカウンターを得点源にしている選手には、最高の相棒となるだろう。

ドライブの引き合いなど大きな展開になっても打ち負けるような感覚はない。初中級者が安心してプレーできるラバーでありながら、上級者層が実戦で使っても小技・大技ともに問題なくこなせる汎用性と死角のなさ。さすがは万人から愛されるヴェガシリーズの最新作と言いたくなるほど完成度が高い。

中国と欧州の調和が生む
異次元のハイバランス

もちろん、弱点や不満点がゼロなわけではない。まず、とんでもない反発力や飛距離が勝手に出るラバーではないので、爆発的な球威を第一に求めるプレーヤーには不向きである。また、球質がきれいで素直なため、本家中国ラバーのような回転量や弾道のばらつきによる決定力がほしいというタイプにも向かない。

しかし、打球感の良さとミス発生率の低さ、サービスや台上での操作性の高さ、カウンタードライブの安定性や引き合いの強さ、カットプレーにまで対応できる応用範囲の幅広さなど、美点を挙げればキリがない。本体価格の6,000円はヴェガシリーズとしての過去最高額となっているが、その価値は十分すぎるほど有している。

初中級者が使えば、安定性を損なうことなく競技力を飛躍的に向上させてくれる極上のステップアップラバーとして、中上級者が使えば、どんな状況にも対応してくれる万能のユーティリティーラバーとして機能する。中国テイストと欧州テイストが調和した異次元のハイバランスを、あなたもぜひ体感してみてはいかがだろう。

ヴェガプロハイブリッドの側面。トップレイヤーが厚く、粒は低い。
この形状自体は中国ラバーに近いかもしれない
ヴェガ プロ ハイブリッド

微粘着性テンション裏ソフトラバー
スポンジ硬度 47.5度
カラー レッド、ブラック
厚さ MAX、2.0、1.8mm
価格 ¥6,490(税込)