2024年06月28日
本年(2024年)3月に先行発売されたヴェガプロハイブリッド(以下プロH)のリリースから遅れること約3カ月。ヴェガアジアハイブリッド(以下アジアH)、ヴェガヨーロッパハイブリッド(以下ヨーロH)の2アイテムが満を持して日本市場に登場した。今回は、その個性的なパフォーマンスを紹介していく。
まずおさらいだが、ヴェガH(ハイブリッド)シリーズは、中国式ラバーのアドバンテージであるグリップ力の高さを持たせた微粘着トップシートに、ヨーロッパ式ラバーのエネルギー内蔵型テンション機構を組み込んだスポンジをドッキングさせ、中欧双方の長所を同居させたラバーである。
その中でいち早く登場したプロHは、球持ちの良さとボールの伸びを両立させた至高のハイバランスモデルだったが、アジアHとヨーロHはまたひと味違ったテイストのラバーとなっている。剛のアジアHと柔のヨーロH、それぞれの魅力に迫ってみよう。
アジアHの特徴は、何と言ってもそのハードな打球感だ。スポンジは硬度50。トップシートも表層がやや肉厚で硬く、まるで「俺を使いこなせるもんなら使いこなしてみろ」と言わんばかりの頑固一徹・硬派なラバーとなっている。重量もなかなかヘビーで、少なくとも初中級者向けではない。
打球感はすこぶるソリッド。一打一打がビシッと手に響き、強打時の手応えにこだわるプレーヤーを満足させてくれる。ドライブすると、回転のかかりは良好だが弧線は低い。相手コートへの到達スピードがかなり速く、カウンターを食らう心配がないのはハイレベルな実戦における大きなメリットと言える。
サービスやツッツキといった下回転系の切れ味も鋭い。ストップの止まりやすさ、カウンター時のボールのつかみやすさも美点となっており、中国ラバーの代替としてフォアハンドでの使用を考えているプレーヤーにはジャストフィットするはずだ。ちなみにスマッシュも非常に打ちやすい。
ヴェガ アジア
ハイブリッド
●粘着性テンション裏ソフトラバー
● ¥6,050(税込)
●厚さ:MAX、2.0、1.8㎜
●スポンジ硬度:50度
一方のヨーロHはアジアHの対極に位置すると言っても過言ではないほど、その性格を異にする。表層が薄めでしなやかな柔軟性を持つトップシートと45度のミディアムソフトなスポンジのマッチングで、究極のコントロール性能を実現。重量も抑えられていて、初中級者でも安心して扱うことができる。
柔らかいラバーはともすれば軟弱なイメージを持たれがちだが、このヨーロHは打球感も発出されるボールもしっかりしている。特にバックハンドで粘着ラバーを使ってみたいというプレーヤーには好相性。強打をビタッと止めるブロック、切れ味鋭いツッツキ、安定性抜群のループドライブなどが自由自在だ。 ソフトタイプのラバーと思えないほど下回転サービスがよく切れるのもセールスポイント。カットの抑えやすさや変化のつけやすさも至高で、攻守両用のオールラウンドラバーを探しているチョッパーには最適品だ。「強く打つだけが卓球じゃないんだぜ」と言わんばかりの多才ぶりが、他にはない魅力となっている。
ヴェガ ヨーロッパ
ハイブリッド
●粘着性テンション裏ソフトラバー
● ¥6,050(税込)
●厚さ:MAX、2.0、1.8㎜
●スポンジ硬度:45度
プロH、アジアH、ヨーロHという3アイテムが出揃ったヴェガHシリーズを俯瞰してみると、これは卓球界の現状に対するXIOMからの挑戦状なのではないかと思えてくる。はっきり言って、ヴェガHシリーズはハイエンドラバーではない。だが、そこには近年の卓球が失った個性が息づいている。
針の穴に糸を通すようなコントロール、高低の弾道変化や左右に曲がるカーブドライブ、いくら打たれても何本でも返球できる鉄壁のディフェンス、爆裂する豪快なスマッシュ……そんな異色・異形のプレーには、むしろ性能的には最上級でない個性重視のラバーが向くのではないか。
そうした設計思想がひしひしと伝わる今回のヴェガHシリーズ。何でもできる万能型のプロH、攻撃力に比重を置いたアジアH、安定性と守備力にステータスを振ったヨーロH……この中に、あなたの卓球を変えてくれる運命のラバーがあるかもしれない。現状を打破したい人は、ぜひ試してみてはいかがだろうか。